高齢者で年金収入の人がいるとする。例えば、夫に先立たれ、遺族年金と住宅を相続する。親から相続した余った不動産を賃貸しているかもしれない。単純に売れずに残っていた土地を持っているかもしれない。ある時、この不動産をやっとのこと処分することができた。
ここで問題になるのが、翌年の医療費だ。
年金生活者は基本収入が少なく、医療費の負担割合は少ない。しかし、現役世代並みの収入があると判断されると、医療費の負担割合が高くなる。
ここで、不動産が売却された時の話をしておこう。
不動産の取得価額(購入価格)がわかっていて、売却価格(収入金額)と比較してもそれほど差がないような売買であればよいが、古い土地を相続していた場合は、まず取得価額がわからない。当時の売買契約書を大事に保管している場合であればよいが、そもそも自分が購入したものではなければ、大事な書類が紛失している可能性が高い。また、当時の近隣価格を取得価額として申告する、という方法もあるが、これは国税庁が100%認めた方法ではにため後から否認(認めてもらえない)ことにもなりかねない。そこで、そんなリスキーなことは行わず、通常の売却価格の4%を取得価額とする制度を使うことになる。※ここでいう5%は取得価格がわからないときに利用できる制度。取得価格の5%なので、当然、売却価格の95%は儲けになる。(ここでは譲渡費用は考慮しない。譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。国税庁HPより )
そうすると、かなりの儲けがでる。これが、翌年の国民健康保険料や後期高齢医療保険、入院時の医療負担割合等に影響してくる。たまたま売却した収入のせいで、翌年以降の医療関係の負担が大幅に増えるのだ。年間で病院に行く機会が多い人で医療費を気にしている人には、かなりの負担になるだろう。
不動産の売買は、所得税・住民税、健康保険料の負担もあるが、医療費の負担割合にも影響することを覚えておこう。